先進的医療

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI:Transcatheter Aortic Valve Implantation)

近年、高齢化に伴い動脈硬化による大動脈弁狭窄症の患者さんが増えています。

大動脈弁狭窄症は、血液の逆流を防ぐ心臓の弁が加齢などにより硬くなって開きにくくなり、心臓に負担がかかる病気です。胸痛や息切れ、失神などの症状がみられ、重症の大動脈弁狭窄症は心不全、突然死の原因にもなり、治療をしなければ症状出現後2年以内に約半数が死亡するといわれています。

重症大動脈弁狭窄症の有病率は、80歳以上では4.8%と報告されており、沖縄県内では約370人程度の患者がいると推測されます。

※重症大動脈弁狭窄症とは

  • 大動脈弁口面積(正常 2.5~4.5c㎡):1.0c未満
  • 平均圧格差:>40mmHg

 

以前は、重症大動脈弁狭窄症に対する治療は、開胸を要する大動脈弁置換術しかなく、高齢や併存疾患(肺疾患、肝臓疾患、癌など)のために手術リスクの高い患者は治療することが困難でした。しかし、カテーテルを使って人工弁を留置するTAVIが登場し、治療の選択肢が拡大し、これまで外科治療ができなかった患者さんも治療を受けられる可能性がでてきました。2013年より日本でもTAVIが認可されました。

  TAVIは、全身麻酔下に足の付け根もしくは心尖部(心臓の先端部)よりカテーテルを挿入し、カテーテルを通して人工弁を留置する治療法です。開胸せず、心臓を止めずに治療ができるため、外科的な弁置換術と比べて、患者さんの体への負担が少なく、1週間程度の入院で済みます。

※TAVIの適応:重症の大動脈弁狭窄症で外科的手術が困難な症例

1. 高齢の方(概ね85歳以上)

2. 過去に開胸手術や胸部への放射線治療歴のある方

3. 肺気腫やCOPDなどの呼吸器疾患の合併のある方

4. 肝硬変などの肝疾患の合併のある方

5. 1年以上の予後が期待できる悪性疾患合併のある方


ただし、すべての患者さんにTAVIを行うことできるわけではなく、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、心臓リハビリテーション医、看護師、放射線技師、臨床工学技士で構成されたハートチームで十分に検討したうえで、慎重に適応を決定しています。

※現時点でTAVIが困難な症例

1. 従来の外科的大動脈弁置換術が可能と判断された方

2. 維持透析を行っている方

3. 大動脈弁が単尖弁または二尖弁の方

4. 高度の大動脈弁逆流症を合併している方

5. 末期の悪性疾患の方

6. ハートチームによる検討で治療を行わない方がいいと考えられた方

 

当院でも2014年5月にTAVIハートチームを立ち上げ、2015年8月に県内で初めてTAVIを施行しました。2019年12月現在までに、203人の患者さんをTAVIで治療しましたが、全員治癒し退院し元気に外来に通院しています。

 

 

 

窓口:第三内科 岩淵成志、第二外科 永野 貴昭

【患者さんが琉大外来受診可能な場合】

診療情報提供書を琉球大学病院 医療福祉支援センター(シエント)に連絡。
FAX 098-895-1498、電話 098-895-1359, 1371
外来での検査(精密心エコー、胸腹部造影CTなど)を予約し、
その日に受診していただく。

 

【患者さんが琉大外来受診できない場合】

診療情報提供書を琉球大学病院 医療福祉支援センター(シエント)に連絡。
FAX 098-895-1498、電話 098-895-1359, 1371
入院先の病院のDrと相談のうえ、出張し、説明・諸検査します。

 

  

 

 

先進医療

 

血管再生治療

※再生医療等安全性確保法施行に伴い、現在実施できません

【問い合わせ先】

 琉球大学病院 第三内科 外来担当医師 石田明夫

 

血管再生治療の実際

先進医療A【末梢血幹細胞による血管再生治療】

実施診療科

第三内科、第二外科

適応症

慢性閉塞性動脈硬化症またはバージャー病(重篤な虚血性心疾患または脳血管障害を有する者を除く)に係るものに限る。

承認年月日

平成22年9月1日

主な内容

[適応]

Fontaine分類III度(安静時疼痛)およびIV度(潰瘍・壊死)で従来の薬物治療や外科治療の効果がなく、回復が期待できない場合。

[主な適応除外]

  1. 悪性腫瘍がある患者、または過去5年間以内に悪性腫瘍の既往がある患者。
  2. 重症の糖尿病性(増殖性)網膜症を有する患者。
  3. 3ヶ月以内に脳血管障害、心筋梗塞発症患者。
  4. 20歳未満80歳以上。

[方法]

G-CSF皮下注射を連日4日間行ない、4日目に患者さんご自身の単核球細胞をアフェレーシスで採取し、30−50ml程度に濃縮し、この細胞を虚血患部の筋肉内に注射します。
おおよそ0.5−1mlずつ、合計約50部位に行います。下肢の場合はアフェレーシスから筋肉内注射までは2日連日で行います。(参考図)

[効果]

この細胞は血管新生を促進する作用を有しており、本治療で血液循環が改善し、症状を改善させることが期待できます。
当施設では、これまで12例の患者さんに本治療を行ない安静時疼痛や潰瘍の改善を確認しています。

【入院費用】

先進医療として1回につき207,500円。
先進医療以外の診療にかかる費用は健康保険が適用されます。

血管再生治療の実際